自宅でコーヒーを淹れようと思ったとき、最初に候補に挙がりやすいのがペーパードリップとフレンチプレスです。
私が最初に選んだのはフレンチプレスでした。器具のことは何も分からず、調べた中で「これなら簡単に淹れられそう」と思ったからです。その後、同じ豆を別の方法でも試してみたいと思い、ペーパードリップも使うようになりました。
ペーパードリップとフレンチプレスでは、味や口当たりにどのような違いが出るのでしょうか。また、淹れやすさや後片付けまで考えると、どちらを選べばよいのか迷う方もいると思います。
これまで、産地や焙煎度の異なるコーヒー豆を、両方の方法で飲み比べてきました。違いは確かにありました。ただ、思っていたほど単純でもありませんでした。
この記事では、基本的な仕組みや使い勝手の違いと、実際の飲み比べで気づいたことを紹介します。初めて器具を選ぶ方だけでなく、いつもと違う淹れ方を試してみたい方にも参考になれば嬉しいです。
この記事でわかること
- ペーパードリップとフレンチプレスの味や口当たりの違い
- 淹れやすさと後片付けを含めた使い勝手の違い
- 実際の飲み比べから分かった、それぞれに向いている人
ペーパードリップとフレンチプレスの主な違い
先にまとめると、ペーパードリップは風味の輪郭や一杯の中で起きる変化を追いやすく、フレンチプレスは甘味やコクをまとまりとして感じやすい傾向がありました。
| 比較項目 | ペーパードリップ | フレンチプレス |
| 抽出方式 | お湯を粉に通す透過式 | 粉をお湯に浸す浸漬式 |
| 味の傾向 | すっきりとして輪郭を追いやすい | 丸みがあり甘味やコクを感じやすい |
| 口当たり | 軽く、微粉(細かなコーヒー粉)が残りにくい | オイルを含んだ厚みがあり、微粉も残りやすい |
| 淹れ方 | 注ぐ速さや回数で味が変わりやすい | 粉量・湯量・時間をそろえやすい |
| 後片付け | フィルターごと粉を捨てやすい | 粉を取り出して金属フィルターを洗う必要がある |
ただし、これはあくまで全体的な傾向です。ペーパードリップでもコクのある味になり、フレンチプレスでも軽やかに仕上がることはありました。どちらが優れているかではなく、どのような味や使い方を求めるかで選ぶのが分かりやすいと思います。
味と口当たりが変わる理由は、抽出方式とフィルター
ペーパードリップとフレンチプレスでは、コーヒーの粉とお湯の触れ方、そして抽出後に粉をこすフィルターが異なります。この2つの違いが、味だけでなく淹れ方や後片付けにもつながっています。


ペーパードリップは紙、フレンチプレスは金属フィルターでコーヒーをこします。
ペーパードリップはお湯を通して抽出する
ペーパードリップは、コーヒーの粉に注いだお湯がフィルターを通り、下のサーバーやカップへ落ちていく透過式です。
私が普段使用しているHARIO V60は、底に大きな一つ穴があり、注ぐ速度によって味を変えられる構造になっています。HARIOの公式サイトでも、速く注げばすっきり、ゆっくり注げばコク深くなると説明されています。
また、ペーパーフィルターは、豆に含まれる油分や微粉をある程度こし取るため、口当たりが軽くなりやすい特徴があります。私の飲み比べでも、酸味や苦味、香りの違いを分けて捉えやすく感じました。
その一方で、一般的な淹れ方ではお湯を何回かに分けて注ぐことが多く、注ぎ方によって味も変わります。
フレンチプレスは粉をお湯に浸して抽出する
フレンチプレスは、容器の中でコーヒーの粉をお湯に浸し、一定時間が経ってから金属フィルターで粉を押さえる浸漬式です。
ペーパーフィルターを使わないため、豆に含まれる油分(コーヒーオイル)がカップに入りやすく、舌触りには厚みが出ます。 UCCのフレンチプレスに関する解説でも、金属フィルターでは紙でこし取られる油分が残りやすいと説明されています。細かな粉も多少残るため、ペーパードリップより濁りやざらつきを感じることがありますが、それもフレンチプレスらしい口当たりの一部です。
粉量・湯量・抽出時間を決めれば手順をそろえやすく、ペーパードリップほど細かく注ぎ分ける必要もありません。ただし、粉の取り出しや金属フィルターの洗浄が必要なので、抽出後の片付けには少し手間がかかります。
飲み比べを重ねて分かった4つのこと
これまでの飲み比べでは、それぞれの器具の特徴を活かすため、豆量・挽き目・湯量などを抽出方法に合わせて調整してきました。そのため、完全に同じ条件で優劣を決める実験ではなく、実際においしく飲むときの違いを比べたものです。
振り返ってみると、ペーパードリップとフレンチプレスの違いは、単純に「すっきり」と「濃厚」だけでは説明できませんでした。特に印象に残ったのは、次の4つです。
ペーパードリップは一杯の中で起きる変化を追いやすかった
浅煎りのゲイシャをペーパードリップで淹れたときは、最初にトロピカルフルーツのような風味を感じ、飲み進めるとジャスミンのような香りへ変わりました。さらに冷めてくると酸味が強まり、最後はグレープフルーツのような印象になりました。
一方、フレンチプレスでは酸味が控えめになり、甘味を中心としたやさしい味わいでした。ペーパードリップでは、一杯の中で風味の輪郭が切り替わっていく様子を追いやすかったことが印象に残りました。
ゲイシャを飲み比べたときの詳しい変化は、「ゲイシャは酸っぱいのか?実際に飲んで感じた抽出ごとの違い」で紹介しています。
フレンチプレスでは味の主役が甘味に変わることがあった
ベトナムのルビーマウンテンをペーパードリップで淹れたときは、最初に苦味とコクがあり、飲み進めるとベリー系の酸味や黒糖のような甘味が現れました。
フレンチプレスでは、最初からスイートポテトを思わせるねっとりとした甘味が広がり、苦味よりも甘味が中心でした。同じ豆でも、抽出方法によって味の強さが変わるだけでなく、何を主役に感じるかまで変わることがありました。
詳しい飲み比べは、「ルビーマウンテンはどんな味?淹れ方で見えたベトナムコーヒーの個性」にまとめています。
フレンチプレスでも繊細な香りを感じたことがあった
エチオピアのシャンタウェネをペーパードリップで淹れたときは、白桃やラズベリーのような果実感と、後味に残るミルクチョコレートのような甘味を感じました。
フレンチプレスでは甘味が中心になりましたが、フローラルな香りはペーパードリップより強く、白桃のような風味も分かりやすく感じました。
この飲み比べでは、抽出したコーヒーをすべて注ぎ切らず、3/4ほどをカップに移していました。それまでよりカップに入る微粉が少なくなったため、それが香りの感じ方に影響した可能性もあります。ただ、同じ豆で注ぐ量だけを変えて比べたわけではないため、理由は断定できません。
それでも、フレンチプレスでは繊細な香りを捉えにくいと思っていた私にとって、香りが前に出たのは意外でした。
このときの詳しい飲み比べは、「深煎りと浅煎りの間をつなぐ一杯?エチオピア シャンタウェネの魅力とは」で紹介しています。
抽出方法を変えても豆の個性が残ることがあった
ブラジルをペーパードリップで淹れたときは、苦味とアーモンドのような香ばしさがあり、冷めるとビターチョコレートのような印象へ変わりました。
フレンチプレスでは苦味が丸くなり、冷めるとミルクチョコレートのような甘味を感じました。それでも、どちらにもナッツやチョコレートを思わせる共通点が残り、抽出方法による違いは想像していたほど大きくありませんでした。
器具によって味の出方は変わりますが、豆が持つ軸まで必ず変わるわけではないと気づいた例でした。詳しくは「ブラジルコーヒーはなぜ定番なのか?飲み比べて気づいた意外な理由」で紹介しています。
ペーパードリップとフレンチプレスはどちらが向いている?
ペーパードリップが向いている人
ペーパードリップは、すっきりした口当たりで、香りや酸味の変化を追いながら飲みたい人に向いています。
- クリアで軽やかな口当たりが好き
- 冷めるまでの風味の変化を楽しみたい
- 注ぎ方を工夫して味を調整したい
- 抽出後の粉を簡単に片付けたい
ペーパーフィルターごと粉を捨てられるため、日常的な扱いやすさも魅力です。その一方で、抽出中はお湯を何回かに分けて注ぐ必要があり、注ぎ方によって味が変わります。
初めて器具を一つ選ぶ場合も、微粉の少ない口当たりと後片付けのしやすさを優先するなら、ペーパードリップから始めやすいと思います。
フレンチプレスが向いている人
フレンチプレスは、コーヒーオイルを含んだ厚みのある口当たりが好きな人や、甘味やコクをまとまりとして楽しみたい人に向いています。
- 甘味やコクを中心に感じたい
- オイルを含んだ厚みのある口当たりが好き
- 注ぎ方よりも粉量・湯量・時間を決めて淹れたい
- 微粉や多少の濁りが気にならない
お湯を注いで待つという手順はシンプルですが、抽出時間が特別短いわけではありません。また、使用後は容器に残った粉を取り出し、金属フィルターを洗う必要があります。
それでも注ぐ技術に比較的左右されにくく、手順をそろえて淹れたい人にも向いています。ペーパードリップでは軽く感じた豆を、もう少し甘味や厚みのある味わいで楽しみたいときにも試しやすい方法です。
今回の比較で使用した器具は、HARIO V60とBODUM KENYAです。どちらから始めるか迷っている方は、記事で紹介した口当たりや片付け方の違いも含めて、器具選びの参考にしてください。
まとめ:求める味と使い方に合わせて選ぶ
ペーパードリップは紙のフィルターへお湯を通すため、風味の輪郭や一杯の中で起きる変化を追いやすい抽出方法です。フレンチプレスは粉をお湯に浸し、金属フィルターでこすため、甘味やコクをまとまりとして感じやすい傾向がありました。
ただし、今回の飲み比べでは、フレンチプレスでも香りを分かりやすく感じた例や、抽出方法を変えても共通した個性が残る豆もありました。すっきりした口当たりと後片付けのしやすさを求めるならペーパードリップ、甘味やコク、オイルを含んだ厚みを楽しみたいならフレンチプレスが選びやすいと思います。
まずは求める味と扱いやすさで一つ選び、慣れてきたら同じ豆をもう一方でも淹れてみると、自分が好む違いをつかみやすくなると思います。


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